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エグゼクティブインタビュー

AMBL株式会社 取締役CTO 堀 浩史 氏

AMBL株式会社 取締役CTO 堀 浩史 氏

2022年3月に専門領域の異なる3社を統合し新しいスタートを切ったAMBL社。同社の技術者をマネジメントしている取締役CTOの堀さんは学生時代はアメリカで過ごし、フリーランスから取締役になられるという経験をされています。若いころからダイバーシティな価値観を持ち、エンジニア教育への熱い想いをいろんな形で実現してきている堀さんにAMBL社のこれまでと未来の話をお伺いさせて頂きました。(https://www.ambl.co.jp/)

AMBL株式会社 取締役CTO 堀 浩史 氏

AMBL株式会社

取締役CTO 堀 浩史 氏

システム基盤系のエンジニア、プロジェクトマネージャーを経て、某SIer企業で開発部門および管理部門の取締役に6年間従事。2012年エム・フィールド(現AMBL)入社。現在はAMBLの取締役CTOとして教育プログラムを牽引。

インターウォーズ株式会社 インタビュアー 小黒 力也

インターウォーズ株式会社

インタビュアー 小黒 力也

理系大学院修了後、国内系シンクタンクに入社し、金融機関向けのシステム開発に従事。ヘッドハンティング業界に転じ、IT部門のマネージャを経て、現職。

アメリカ留学時代に出会ったインターネット、アルバイトから取締役へ、個人事業主を経てAMBLへ

小黒 力也(以下、小黒堀さんご自身の経歴を教えてください。

堀 浩史 氏(以下、堀):日本の高校を卒業した後、アメリカに行きました。アメリカでは情報系ではなく、文系の学問を学んでいました。ちょうどwindows95が出た時です。PC購入をきっかけにこの世界に入りました。当時、日本では夜だけ繋げるテレホーダイがありましたが、アメリカはローカルコールが無料だったので、ずっと繋いでいられたのですが、これがすごく楽しかったです。帰国後もPCのヘルプデスクのアルバイトなどをしているうちに、この世界にどっぷりと入り込んでしまいました。アルバイトをしていた会社に就職して10年くらい働いたのですが、そのうち6年は取締役を務めました。一区切りついたところで取締役を辞任し、個人事業主のようなことをしていました。

いろいろなオペレーティングシステムが好きで、例えばMacなのにLinuxを入れるようなことを結構していたんですよね。そのうちに「OSがどうやって動くのか?」から始まって、アプリミドル、アプリ基盤の世界がすごく好きになりました。ミドルウェアに非常に興味があり、 そういう仕事を個人事業主になっても請け負って、共通部品を作りたいということをずっとしていたんですね。 そんな中、友人の依田氏が、AMBLの前身のエム・フィールド社長になっていて、一緒にやらないかという事になり、入社することになりました。取締役ではなく一メンバーとして入社し、そのうちに副部長になったという感じでしたね。 2012年、当時は150〜250人くらいの規模で、業績も上がっていて、みんなで仲良く仕事をしている居心地のよい雰囲気の会社でした。

小黒:アメリカの留学経験で強く感じた事はどんな事ですか。

堀:アメリカにはいろいろな人種の方がいて、いろいろな意見がある。アメリカはそれを受け入れながら、自分の主張は持つというスタンスです。きちんと言いたいことは言う、けれども人の意見も認める。自分が少数派でも、そういう意見を持っていることを尊重してくれる。ですから私も、自分がマジョリティ側にいたとしても、少数の意見をきちんと尊重するという事を大切にしています。

専門会社を3社統合、新生AMBL社のCTOの役割と課題感

小黒:今のAMBLはどのような会社だと捉えていますか。

堀:非常に面白い会社だと思っています。普通はシステム開発だけ、ブランディングだけ、UI/UXだけ、クリエイティブだけなど、それぞれに特化した会社が多いですが、弊社はAIを冠にして、システム開発もUI/UXもブランドブランディングもできる、価値や職種がすごく広がっている会社で、非常に可能性は高い。技術もデザインも強く、AIもあるのは稀有なことだと思います。 私は技術から来ましたが、クリエイティブやブランドブランディングのメンバーがすごいところからジョインしてきた。彼らが自分たちとは違う世界で仕事をし、融合しているのを見るのは非常に楽しいです。

小黒:堀さんは2022年3月にAMBLの取締役CTOになられました。堀さんのミッションや役割を教えてください。

堀:一般的にCTOの役割として、会社が担うべき次の技術は何かという方向性や、今のトレンド、今後AIはどうなっていくのかなどを経営陣に紹介していくのが一つのミッションだと思っています。もう一つは社員をどう教育していくか。技術者はレベルもいろいろなので、在籍中にいかに高い技術力を持ってもらうかが私のミッションです。そういう意味で、教育コンテンツも作っていきます。

小黒:堀さん自らが個別の案件に入るようなことはありますか。

堀:昔はありましたけれど、最近はないですね。ただこの前の正月にサーバーからコールが入ったときは私が受けました。みんなはお休みだろうと思って。時々、現場に帰りたい病に少しなるんです(笑)

小黒:堀さんが感じられる課題感はどんなところでしょうか。

堀:やはり人材不足です。世の中全体の技術者不足に、ノーコード・ローコード、SaaSという選択肢もありますが、私たちの会社がどう応えていくかというところに、大きな課題があります。技術者の技術力を上げるとともに生産性も上げなければいけないのですが、技術力を上げるには教育。生産性を上げるには仕組みだと考えています。 技術はどんどん生まれて、すごいスピードで変わっていきますから、5年後のAIの姿は、私たちが今思っているAIの姿と全然違うところにある。それに柔軟に対応するには、もっと私たちも踏み込むべき部分はたくさんあると思っています。

小黒:若手の方々が成長するにはどんなことをしていくのがよいと思いますか。

堀:教育も座学、知識を単純に覚えていくだけだと、今ひとつ身に付かないというか、腹落ち感がないと思っています。ただ受託開発の世界は、お客さんが求めるフレームワーク(技術や手法)を使うことになります。そうなると新しい技術が入ってこない。いくら優秀な技術者でも、「新しい技術への興味は、業務以外の時間で学習しなくてはならない」という話になってきます。 そこで私たちは、自分たちが技術を選べるようにしたいんです。
例えばですが、お客さんに対して「この技術でやるならば、提示額の8割でやります」と提案し、自分たちがやりたい技術でやらせて頂く。そうすることで優秀な技術者たちは、「じゃあ新しい技術を試してみよう!」、「やりたい技術を使ってまたやりましょう!」と。そういう意欲を全面に出して、開発ごとに取り組ませて頂くことで、優秀なメンバーは新しいことに取り組めてモチベーションを上げられるのではと考えています。

小黒:お客さんに対して能動的な提案をしていくということなのですね。

堀:実際にReact(※JavaScriptライブラリ。Facebookのメタ社が開発)などを勉強していても、実践できる場がなければ身に付いていかない。そういう意味で、そこを重視して取り組みをさせていただいています。それ以外の初級、中級のメンバーに関しては、座学とそれに対する実践を行うことによって、少しずつステップアップする。3年ぐらいを目処に一人前になってほしい。初級の人でもそのスパンで一人前になってくれると、次の人も受け入れやすいと思っています。

専門会社を3社統合、新生AMBL社のCTOの役割と課題感

技術者のレベルアップ、自己成長に向けて

小黒:堀さんはアルバイトから取締役にキャリアアップされています。エンジニアのレベルアップ、キャリアアップにはどんなことを心がけていくといいのでしょうか。

堀:非常に難しい質問ですね。多分、今の時代と私たちの時代は違うんだろうなと思っています。自分たちの時代は興味があったから夜寝ずにコードを書いていたりしましたが、同じことをしろというのは、違いますよね。今の時代はきちんと体系立てた教育プログラムを提供することがとても大事だと思っています。開発も、開発プロセス自体も成熟してきました。勉強方法も変わってきています。私たちは、自分たちが学んできたことを言語化することに取り組んでいますので、秘訣と言うよりは、是非そのプログラムに乗ってほしいと思っています。その中で、少しずつレベルアップするように勉強してくれればいいかなと。

小黒:転職する時に、定年までいたいというモチベーションの人は最近減っていると思うのですが、どんな風に感じられますか。

堀:参画したら定年まで」という時代ではないと思っています。私自身も何回も転職しているという事もありますが、定年までいてほしい、などとは思ってはいないです。いろいろな人にAMBLに来て頂いて、世の中にAMBL卒業者を増やしたい。 「あの優秀なできる人はAMBL卒業者」、「このできる人もAMBLを卒業したのか!」となるなら、AMBLを登竜門としていただいても全然いい。それぐらいになれるようにしていきたいなと思っています。

現場と距離感が近い新生AMBLの経営陣

小黒:経営陣の顔ぶれも当時の依田さんから変わられましたが、堀さんから見て今の経営陣はどんな方たちでしょうか。

堀:良い悪いという話ではなく、今のAMBLに合っている経営陣だと思います。当時のエム・フィールドの経営陣はその時代で必要だった経営陣でしたし、今のAMBLは、急成長しているこの時期の経営陣としてベストなんだろうと思っています。 社長の毛利は本当に営業肌で、人との関わりをすごく重視するタイプです。取締役COOの秋山は賢くて、「THE社長」のようなイメージ。僕は理屈っぽいのですが、3人が全然違うタイプなので、面白いなと思っています。同じタイプだと非常に偏ってしまうので。 3人に共通するのは社員や現場に近いことだと思います。現場から上がってきているので、社員からすると親近感がある存在だと思います。

直近3年で300人増、幸せな中小企業からの脱却

小黒:直近の約3年で御社は300人を超える方々が新たに参画されています。過半数が新しい人になり、大きな変化もあったと思います。今までいた方たちから、良いところ悪いところ、どんな声が上がっているでしょうか。

堀:規模が大きくなることの弊害は当然あると思っています。エム・フィールド時代のアットホームな雰囲気は、今のAMBLでは徐々に失われていく、それはもう仕方がないことですね。(IPOに向けて)監査法人も入り、証券会社も付くと、ルールも増えて、堅苦しくなってくる。ただ、お客さんに対して私たちが預かっているお金をどう使うのかということが、きちんと説明できるということに関しては、非常にいい流れと言いますか、当然の流れですね。幸せな中小企業から脱却していくという過程だと思っています。

小黒:会社としての融合は順調で、衝突はあまり大きくなかったということでしょうか。

堀:もちろんゼロではないし、会社の雰囲気が変わったという人もいると思いますが、それはそれで新しいAMBLなので。3社のうちどこかの企業文化に合わせるのではなく、AMBLという全く別の名前の会社にしたことで、新しい文化でやっていきましょうというメッセージになる。心機一転、こんな立派なオフィスに来ましたので、みんなが新しい風として捉えてくれていると思います。

新サービスが出来るまでの道のり

小黒:話が変わりますが、御社では白杖を検知するサービスなど、新しいサービスがいくつも生まれています。どのように新サービスが出来上がるのでしょうか。

堀:トップダウンでというのはそんなに多くないですね。どちらかといえばボトムアップ。ブレストなどをやっている中でのアイデアとして生まれたりします。ブレストのアイデアの種は、例えばクライアントから「こんなことができないだろうか?」と聞いてきた人が投げて、では「こんなものが作れるのでは」、というところからですね。ある商業施設の方に、「お客さんがフロアで何をしているのかを知りたい」と言われた時に、「カメラが何台もあると、異なるカメラで映っている人が同じ人なのかを判定するのが非常に難しい」と聞き、「それが可能になれば製品になる」ということで「SHIFTRACER(シフトレイサー)」(複数カメラによる同一人物のトラッキングシステム)が生まれました。

小黒:このフロアにある「eduleap」という、テレビ朝日さんと一緒に作られた会社がありますね。こちらはどんな背景だったのですか?

堀:元々、社内でお給料を貰って研修する「SITC」という教育コンテンツを作っていました。その部署が子会社になり、そこにテレビ朝日さんに出資を頂いて、eduleapという会社ができています。私も管掌で取締役をしています。先ほど教育が課題だと申し上げましたが、それは世間一般でも同じことなので、テレビ朝日さんのコンテンツ制作力を元に、よりよい教育コンテンツにして売りましょうというのが、eduleapいう会社です。テレビ朝日のアナウンサーさんが、AIの講習をしてくれます。台本は我々が書き、ここにスタジオもあるので撮影、編集もしています。G検定という、AIの検定を取得するための動画が180本あるのですが、今それを販売しています。

小黒:企業向けだけですか。それとも個人に向けても販売されていますか。

堀:今は個人向けには発売せず、法人向けだけでスタートしています。そのうちに個人向けやクレジットカード決済もできるようにしようという話になっています。弊社もeduleapのアカウントを購入して、社員が使えるようにしています。

新サービスが出来るまでの道のり

在宅ワーク、でもリアルコミュニケーションも大切に

小黒:2022年の4月から、週1の出社日を設けたり、コアタイムを作ったりという全社的な動きがあったとの事ですが、堀さん管轄の部門では、こういう働き方の人が多いというのはありますか。

堀:会社に来られる人、来られない人はありますが、だいたい週1来ている感じですね。やはり新しい人が多いので、顔なじみになるには、オフィスで顔を合わせて雑談をするところにきっかけがあったりするので。そういう意味で、出社はきっかけづくりでしかないと思っています。出てきても誰とも話をせずに帰るなら、家でいい。新しい人とお茶を飲んだり話をしたりができるので来ませんか?ということです。COOの秋山が主催する勉強会や、ピザを食べる会もあります。フットサルとかボードゲームの部活の費用も負担して、リアルでコミュニケーションを取れるような雰囲気作りもやっています。あくまでも本人の自由ですが、やはりコミュニケーションを増やすことで、悩みの相談もしやすくなると思います。

小黒:人事評価や昇給が年に2回と伺いましたが、どんな観点で評価をされるのでしょうか。

堀:2022年9月に人事制度を全部変えました。それまでは各会社の人事制度をそれぞれに適用していたのですが、ようやくAMBLの人事制度を作って全社員に適用しました。今まで部門の業績に左右されるような評価だったのが、個人の評価にフォーカスするようになりました。所属する部門の業績が悪くても、個人の評価が認められれば、評価される人事システムになっています。

小黒:この春、50数名の新入社員を迎えられるそうですね。パソコンを分解して再度組立てるという、座学だけでない体験を新人研修でするところが非常に面白いと思いました。

堀:教育も何を教えるかが非常に難しい。個人的な感想ですが、コーディング言語、プログラミング言語は独学でやってくれと思っています。少し大げさかもしれませんが、ある程度の基礎は教えて、あとはググってくれと。ググったら、サンプルコードが山ほど出てきます。なぜその言語を使って書けば動くのか、なぜOSが動いてその命令を聞いてくれるのか。そういう本当に基礎的な知識がないまま「プログラミングができます」となってしまうと、新しい言語が出てきた時に、また一から考えないといけない。ある程度基礎を知っていれば、Javaであろうが、JavaScriptであろうが、Pythonであろうが、原理は一緒なので自分で対処することができる。ですからなるべく基礎の部分をきちんとやろうというのが、私の考えです。何か作って動く方が楽しいので、勉強する側はあまり楽しくないところかもしれません。でも、ツールを使えることが一種のスキルのようになっているので、そこから脱却しないと本当の技術者にはなれないですね。

音楽と共に生き、仕事を通じて世の中に提供するものは

小黒:仕事を通じた堀さんの夢を教えてください。

堀:早くリタイアしたいですね(笑)真面目な話、上場や、この会社を大きくするという事も一つなのですが、私自身が何か残せるものを作っていきたいと思っています。いろいろなサービスを私も作っていますが、それが将来この会社の主軸になればいいなと。私は常々システム開発するにあたって、「作るシステムに思想がないと失敗する」と言っています。やりたいことやできることがたくさんあって、全部を入れたらすごい金額、工数になってしまう。どう取捨選択をするかという時に、何を目指しているかという思想がなければ選べません。そのマインドをこの会社のシステム開発に植え付けたいし、みんながその方向に向かってくれると嬉しい。ロジカルなようで、どちらかというと、もう少し泥臭い部分かなと思っています。

小黒:堀さんのマイブームや興味のあることはどんな事ですか。

堀:実はずっとクラシックの声楽をやっていて、歌を歌うことですね。合唱団に入り、時々オペラにも出演しています。

小黒:堀さんは今後、どんな人と一緒に働きたいですか。

堀:私は同じような人がたくさん集まっていてもダメだと思っています。先ほどお話ししたAMBLの経営陣と一緒で、同じプロジェクトの中で同じような人たちばかりが集まっていても、多分楽しくない。いろいろな人たちが集まって来たらいいと思っています。逆に何もない人は来てほしくない。何か特徴がある、何か秀でたものがある人たちが集まると、非常に良いものが生まれる。うちは真面目な人が多いのですが、真面目一辺倒ではなくて、少しやんちゃでも「これだけは負けない」という何かを持っている人たちは、私にはとても魅力的に映ります。

小黒:採用面接で、堀さんが強く意識する点はどんなところですか。

堀:きちんと理由を説明できるのは非常に大きいと思っています。お決まりの答え、どこかで拾ってきたような言葉は印象に残らない。その人のこだわりや個性を知らせてほしいですね。逆に私たちも、今の時代の面接の場は、私たちがアピールし、私たちが選んでもらう場だと思っています。先ほどお話したような、私たちの思いを話ししたり、(Zoomの画面に)うちの犬を同席させたり、姑息な手段を使って、印象に残るように心掛けています(笑)印象深くないとダメだなと思っていますので。

小黒:最後になりますが、今後御社を志望される方に、メッセージを頂けますか。

堀:いつも言っているのですが、AMBLはすごく面白い会社で、「安定したベンチャー」です。経営は安定していますし、一方でスタートアップ感はたっぷりあるので、そういう雰囲気で仕事をしたい方に、AMBLは非常に合っていると思います。色んな方と一緒に働けることを楽しみにしています。

小黒:本日はありがとうございました。

音楽と共に生き、仕事を通じて世の中に提供するものは