コンサルタントコラム
Voice 109 「しゃべる力」がチームを前に進める – 土屋 孝一郎

60歳の私は現役のラグビープレーヤーであり、エグゼクティブサーチのコンサルタント、そしてドラッカー好きでもあります。
そんな私が、最近あらためて大切だと感じているのが、「しゃべること」、つまり具体的に意図や状況を共有するコミュニケーションです。
ラグビーが変わった。求められるのは“黙ってプレー”ではない
ラグビーといえば「黙々と自分の役割を果たす」無骨な男たちのスポーツというイメージがあるかもしれません。私が学生時代はそんな感じでした。
しかし、今のラグビーでは激しいぶつかり合いや全力疾走の最中でも、いかに“しゃべるか”が勝負を分けます。
たとえば、ディフェンスの際には「自分が誰を見ているのか。どこに危機があるのか」を声に出して共有し合う。攻撃時も以前ならパスをもらうために「右右!」と叫んでいた場面も、今では「右、深め、45度」などとより具体的に伝えることが求められるようになりました。
※強いチームはとっくにできていますが、私のチームはまだまだ全然です。
これを自然にできるようにするには、日常の練習から意識的に行い、もっとしゃべれと指摘しあう必要があります。
※ちなみに、ラグビーは1チーム15人。全員が意図を一致して、攻めたり守ったりするには、かなりの量の“会話”が重要なのです。
ドラッカーの教え:「上司を驚かせてはいけない」
ラグビーでの気づきは、ドラッカーの好きな言葉とつながりました。彼は「部下は上司を驚かせてはいけない」と語っています。
これは、悪い報告を遅らせてビックリさせるのはもちろん、良いニュースであっても突然のサプライズは避けるべきという意味です。
リーダーが最適な判断を下すには、常に正確で具体的な情報が必要だからです。
つまり、ビジネスの現場でも「状況を常に具体的に、相手の判断を助ける形で伝えること」が、組織全体をスムーズに動かす基本です。
歩道での学び
そんなことを考えながら、自転車に乗っていたある日。細い歩道で、前方に横並びの二人組がいました。
※歩道を自転車で走ることの是非はここではスルーしてください。
少し道を空けてほしかったのですが、ちょっと閃いて、
「すみませーん、自転車右側通らせてくださーい!」と言ってみました。
これまではただチンベル鳴らしたりしていたのですが、“どうしてほしいか”を具体的に伝える方が、良いに違いないと思って、です。
ちょっとした違いですが、これは仕事にもラグビーにも日常の人間関係にも通じるものがある気がします。
「もう少し具体的にしゃべる」ことが、実は一番大事かもしれない
最先端の知識や、難問を解く頭の良さも一つの武器ですが、人は一人ぼっちでは生きられない以上、仲間と一緒に物事をストレスなく前に進めることが必要で、そのためには、相手の立場に立って、「もうちょっと具体的に、しゃべること」がとっても大切。
そんなふうに考えると、ラグビーも仕事も日常生活も同じですね。