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コンサルタントコラム

Voice 58 我々は何者で、どこへ向かうのか

新年あけましておめでとうございます。本年も皆様にとって、実りある一年となりますこと、心よりご祈念申し上げます。

さて、2017年のビジネスシーンは、相変わらず話題の絶えない年でした。
一昨年から引き続き、AIやIoT、Fintechといったキーワードに加え、「働き方改革」「副業解禁」「RPA」など、会社員の仕事にまつわるテーマも多くの耳目を集めました。

一方で、小職の携わる新規事業の領域においては、クライアント企業の要求が明確にレベルアップしたことを感じさせられた一年でもありました。

これまでは、新規事業が評価されるにあたり、その比較対象となるのは既存事業であり、既存事業と比べて新しいのか、収益性が高いのか、取り組む意義があるのか、といった議論が重ねられていました。

しかし昨年辺りからは、比較対象となる既存事業が、もはや持続可能なモデルとは言えないという危機意識を背景に、その新規事業がはたして、自社の次代の柱となりうるものなのか、という観点で評価をされるようになったと感じています。

我々はそれを、「本業の再定義」と申し上げておりますが、今や全ての日本企業が、「本業の再定義」と向き合わざるを得なくなったと認識しています。

「本業の再定義」とはすなわち、「我々は何者で、どこへ向かうのか」という問いに答えることでもあり、その答えを見出す試行錯誤は、ある種の「アイデンティティクライシス」の中にあると申し上げても良いかと思います。

その文脈の中で語られる、AIやIoT、Fintechといったキーワードは、人間がこれまで積み上げてきた営為が失われてしまうのではないか、という「不安」を伴うものであり、「働き方改革」を始めとする仕事に関わるワードも、これまでの日本企業が前提としていた諸条件が崩れていくといった、根底に悲劇的な色合いを纏った形で語られていたように感じます。

さらに、コンテンツやサービスの輸出先だと多くの人が考えていた中国が、彼の地のサービスの方が(色々な特殊事情はあるにせよ)遥かに先進的であり、Mobikeの進出に見るように、逆に日本がそのサービスを受け入れる立場になったというような事例も、日本に大きな衝撃を与えました。

引き続き緊張感の高まる国際情勢もあり、2017年は20数年振りの株高にもかかわらず、その実感が乏しい、多くの方にとって漠然とした不安を感じる一年だったのではないでしょうか。

「我々は何者で、どこへ向かうのか」、この非常に重い問いを、クライアントと考え続ける中で、現時点での唯一の解は、「答えが見えなくても、問い続けなければならない」というものだと考えています。

ある種、泥に塗れるような思索や、オープンイノベーションに代表される、外部との交流を通じた試行錯誤のプロセスを経ることで、アイデンティティは見出され、力強く再スタートが切れるようになるのです。

小職としては、本年の新しい試みとして、引き続きボトムアップでの新規事業創出支援に取り組みながら、CVCやアクセラレートプログラムなどに代表される、オープンイノベーションに何らかの形で関わりつつ、ボトムアップとオープンイノベーションを有機的に連携させるようなチャレンジに取り組んでいきたいと考えております。

「答え」を見出すのは、容易ではありませんが、問い続けた人間にしか「答え」を見出すことは出来ないのだと信じ、クライアントの皆様と共に、歩んで参る所存です。

本年も引き続きのお引き立ての程、何卒宜しくお願い申し上げます。

コンサルタント
渡辺 大